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4. 2004年5月3日(月) CILEK のものづくり

「それでは、工場を案内しましょう」といって、みんな立ち上がった。
タイミングよく、工藤さんと才四郎君が戻ってくる。 工藤さんに、手短に会議の成り行きを説明すると
「ええ!?」と驚き、二人とも一気に体温が上がったように感じた。

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ショールームの壁に
デザイナーがさらさらっと描いた絵
社員食堂にまで絵が描かれている

階下に降り工場へ続く廊下を進むと、一風かわったストリート風の絵が描かれた、 薄暗いトンネルのような場所に出た。
「さすが、センスを売り物にする会社だけのことはある」 そのトンネルを抜けると、左手にショールーム、右手に工場が現れた。

まず、ショールームへ。
工場内のショールームは、写真撮影用の商品置き場と、新作の試作品置き場も兼ねているようで、 まったく見たことのない商品がいくつも置かれていた。 当時はまだカタログに載っていない試作品、新しいオーシャンやマリーナのモチーフも、 このときに見せてもらえた。

CILEK の試作品の山を見ておどろいたのは、新作ももちろんだが、マイナーチェンジの多さだ。
たとえば取っ手、モチーフ、ベッドの脚など・・・。なぜこんなに変えなければいけないのか?

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新作のプリティー・リラと新しくリニューアルしたオーシャン
色合いも、前は白がベースで、ベビーからの品揃えだったが、
ブルーペースに変わり、若々しく、年齢層が上がった

エロールさんの説明はこうだ。
友達の家にいって、CILEK の家具を見て気に入った。だからといって、 まったく同じ商品を買う気になるだろうか? もちろん、答えは NO だ。
とすれば、同じような商品・同じシリーズてあっても、違うモチーフ・仕様であれば、 欲しくなるのではないだろうか?

確かに、言っていることは理解できるし、正論だと思う。
だが、それを実現するには、多大な企業努力が必要だ。 同じ商品を大量生産してしまえば、コスト的にも安く済む。 小ロットの多品種生産は、無駄もあるし想像以上に難しい。
私は OL 時代は広報にいて、社内報を作る関係でいろいろな部署の方に話を聞く機会があったから、 その困難さは容易に想像が付く。 よほど会社全体のモチベーションが高くないと、出来ない芸当だ。

それに、国内メーカーの商品ラインナップと比べてみて欲しい。
CILEK の商品は、軽く200種類を超え、さらには過去のカタログからも注文があれば生産するという。 また、日本市場が成熟してくるようであれば、日本の住宅事情適した「日本仕様の商品」の リクエストに応えてくれる、という。
こんな夢のような話があるんだろうか?

「なぜ、そこまでして、徹底的にいいものを作ろうとするのですか?」 私は本心からおどろき、そう聞いてみた。 答えがまた奮っていた。

「私たちは、CILEK だから。CILEK は、ALL THE BEST 。
最高の人材、最高の品質、最高のものしかつくらない」

強い自負心と誇り。すがすがしいほど、きっぱりと、そう応えた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

工場の生産工程を説明しよう。
私たちがまず案内されたのが、試作品をつくる部署。 この部署は、普通の生産工程の隣に置かれ、かなり広いスペースと人数が割り当てられている。

次に、カットされた板にボルトを留める穴を開ける機械を見せてもらった。
そして、この穴を開ける工程がすむと、1回目の検品が待っている。 この検品作業では、ひとつひとつ組み立ててみて、 ゆるみがないか、きちんと組み合わさっているかなどがチェックされる。

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試作品の部署。フェリラの新作ベッドかしら・・・? カットされ、穴をあけられたボードが並ぶ

この後は、付属品とともに、ダンボールで梱包される。
このとき、ビスやボルトなどの付属品、板に不足はないかチェックされ、 担当者の氏名とともに、日付、製造番号などが捺印される。 ここで氏名を出すことによって、責任感が生まれ、作業の精度が上がるのだという。

梱包が終わった商品は、出荷を待つべく倉庫に移動する。
ここには世界各国に向かう商品が天井高く積み上げられていた。 さらに、ここで出荷前に再検品が行われる。 2度もチェックを受けているのだから、と思い 「商品を抜いて検品するんですか」と聞くと、違うという。 必要があれば、梱包を解いて、全商品検品しなおすのだそうだ。

こうして、出荷をまつ。

海外への輸送は、通常「パレット」という、すのこ状のものに載せて行われる。
そのパレットの上に商品を隙間なく載せ(載せる順番などはコンピューターで計算され、 安全なように手積みで載せられていく)ビニールテープのようなもので、 まったく動かないようにぐるぐる巻きに固定される。
船便はなによりも破損が怖いが、これだけ頑丈にパッキングされていれば、 よほどの事態がなければ大丈夫だろう。私たちの不安材料が、ひとつ消えた。

というのも、出発前に、日通の輸入担当の方にアドバイスをいただいていたのが、 海外の会社のずさんな梱包作業と、輸出作業の不安の指摘だったのだ。
でも、これならば大丈夫。予想以上に信頼できる作業工程だった。

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出荷を待つ製品。世界各国の会社名が並んでいる
これは、アイルランド行き
パレットに載せ、テープで固定された商品
とっても頑丈

時刻は午後6時を回り、早番の人の勤務時間が終わり、みんなバスで帰っていった。 私たちは、明日の会議の約束を10時にし、エロールさんと会社を後にした。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

さすがに緯度が高いだけあり、6時を過ぎてもまた昼間のような明るさだった。
ホテルに戻る前に、エロールさんが弟さんの家に寄りたい、という。 もちろん構いませんよ、と、イネギョルの高台にあるマンション郡に向かった。
トルコは日本とは比べものにならないほど出生率が高く、子供が多いため、 学校が二交代制なのだそうだ。 あちこちに制服を着た子供があふれかえっている。

エロールさんの弟のマンションに着き、階段を上ると、びっくり・・・。
各玄関の外に、靴が無造作に並んでいる。盗まれたりしないんだろうか。
欧米では、もちろん靴を履いたまま家屋に入るのが普通だが、 トルコは違う、ということを初めて知った。
トルコ人は、モンゴル平原の騎馬民族が西に移動していったといわれているが、 騎馬民族のパオ(テント)での生活と、絨毯文化から、靴を脱いで生活するのだろうか・・・?と推察した。

マンションの中は、家族の生活するプライベートなゾーンと、 客用のパブリックなゾーンに分かれている。 つまり、家族用の居間と、来客用の豪華な居間があるのだ。
本当にうらやましい。

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子供部屋は、COCO シリーズで統一されていた。
写真では分かりにくいが、壁は日曜大工で塗ったものだろう。 クマのボーダーを張り、2色で可愛らしくまとめられている。 衣装ダンスを壁に対して斜めに置いていたり、チェストの上のデコレーションのセンスが 「さすが」といった感じだった。

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来客用の居間は、10人くらい楽に座れそうなソファとダイニングセットが。 もてなし好きのトルコならでは。

その後、弟さんの家を後にして、ブルサに向かうこととなった・・・のだが、 突如婚約者のメラルさんに会わせてもらうこととなった。 メラルさんの家は、イネギョルのメインストリート沿いにある。
マンションの前で車を降りるとき、無用心にもパスポートが入った鞄を車内に置いてきてしまった。 こんなに人通りが多いのに。 エロールさんは、「イネギョルは絶対に安心。誰も盗んだりしませんよ」とあっさりとしたもの。

メラルさんは、写真で見るよりもずっと美人で、見るからに優しそうな女性だった。 そこで美味しいコーヒーと、手作りの菓子をいただき、和やかな時間をすごした。 メラルさんの話は、またじっくりと書かせていただくので、今回はおしまい。
鞄は、エロールさんの言葉通り、車内に残っていた。疑り深くてちょっと反省。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

車はブルサに向かって一直線。
時間も時間だし、夕食を食べましょう、ということになった。 工藤さんは、こんなとき悪遠慮をせずに自分の意見を言える人で 「トルコ風のものが食べたい。ピデ(トルコ風ピザ)はどうかしら」と提案してくれた。 お昼でトルコ料理の印象がだいぶ変わっていたので、これは期待できるかもしれない。
ブルサの街に入り、三角形のガラスのピラミッドのある、謎の建物に入っていく。 ここは、ブルサ一のショッピングモールだそう。

確かに、センスがいい。
工藤さんと、トルコ一のガラスメーカー「パシャバフチェ」の店を覗いてびっくり・・・。 ここは、銀座かしら?と思うほどの品揃えと高級感。 普段使いの品から最高級品まで、何でも揃っている。
自分用に買って帰りたいけど、欲しいものが多すぎて選べない。 それに、ビジネスで来ているんだから、自分用の土産を買っている場合じゃないでしょう、 と言い聞かせて、やっとあきらめた。

トルコ風ピザは、思っていたものとまったく違っていた。
「トルコ風」というくらいだから、肉に臭みがあったり、チーズが違ったりするんだろう、と 漠然と思っていたのだが、見た目は普通のピザ。 ひき肉の載っているものを注文したのだが、一口食べて、またごめんなさい・・・ 本当に、美味しいです。
今までトルコ料理を誤解していてごめんなさい・・・。
ピザは竈で焼かれているらしく、カリッと香ばしく適度な弾力のある生地で、 上の肉がまたなんとも豊かな香味を湛えている。美味しい・・・!!!と感嘆しながらいただきました。

そこに突然、エロールさんの友人が。
何でも、結婚式の招待状を渡すために待ち合わせをしていたのだそうで、 そういえば、結婚式前の本当に忙しい時間に、こんな夜中までつきあわせてしまい、 本当に申し訳なく思った。
そして、ホテルへ。

これから、工藤さんと二人で話し合いを持たなければいけない。
タイムリミットは明日の10時。一体、どうしようか・・・

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